そうしたチーム状況で右SBに起用されたファン・ウェルメスケルケン際(FCドルレヒト/オランダ)は、パラグアイ戦のバックパスによる失点に続き、ギニア戦でも失点に絡んでしまった。10分、相手のロングパスに対して身体を入れてFWスマの突進をブロックしたものの、GK櫛引とのコミュニケーション不足からか、クリアするのかバックパスをするのか中途半端なプレーでスマの圧力にシュートを許してしまう。日本ゴールに向かうこぼれ球をクリアしようとしたものの、スマともつれて転倒する間に、ボールはゴールの中へ。スマに倒された場面は反則だったと思うが、主審は笛を吹かずに同点弾を決められてしまった。
このプレーだけでなく、後半10分には相手のサイドチェンジのパスをクリアしようとして空振りし、決定的なシーンを与えてしまう。直後に手倉森監督は際に代え井手口陽介(G大阪)を投入したが、チームメイトも際への信頼は薄らいでいるだろうし、何よりも際自身が自信を喪失していると予想できるだけに、彼の起用は控えた方がいい。2部とはいえオランダ・リーグでプレーしていることで、フィジカルの強さと外国人とのリーチなどの感覚を知っていると判断しての抜擢だったが、プレーに繊細さを欠いたのは致命的だ。
今大会は勝利を目指すことはもちろん、中1日のハードな日程で選手をやりくりするターンオーバーが狙いである。と同時に選手の見極めも大きなテーマだった。ギニア戦のハーフタイムでベンチに下がった南野(ザルツブルク)や、後半12分に浅野拓磨(広島)と交代した富樫らは、戦力として計算できると判断された可能性が高い。DF陣では植田直通(鹿島)は欠かせない戦力だし、原川力(川崎F)も指揮官の信頼は厚い。
さらに、ギニア戦では出番のなかった矢島慎也(岡山)も複数のポジションをこなせるポリバレントな選手だ。ギニア戦では結果を出せなかった浅野もカウンター要員として必要な選手。そう考えると、リオ五輪の最終メンバーは消去法からボーダーライン上の選手が見えてくる。果たしてイングランド戦では誰がテストされるのか。負傷者リストには10人もの選手がひしめいているだけに、今回のトゥーロン国際大会に招集された選手は結果と同時にプレーでアピールしないと生き残れない、厳しい大会と言わざるを得ない。
(サッカージャーナリスト・六川亨【週刊サッカーダイジェスト・元編集長】)