しかし前田は再びイチローを抑えた後に失点してしまう。リアルミュート以下の連打で1死一、二塁のピンチを背負うと、代打デレク・ディートリッチは死球を巡るチャレンジでの中断(結果はボール)を挟みつつ三振に斬ったが、直後の初球を昨季の首位打者ディー・ゴードンにレフト前へ運ばれ、同点タイムリーとされてしまった。
この時点でメジャー最多の101球を投げていた前田は降板を告げられてベンチへ。後続のリリーフ投手が失点したため、前田は6回2/3を投げて7安打、1四球、5奪三振、4失点でメジャー初黒星を喫してしまった。
もっとも降板後に付いた2失点については責任半分と言ってもよく、先発投手の役割は十分に果たしたと評価してもいい。ただしこの日の前田は、変化球が抜けるシーンが多かった。マーリンズの大砲ジャンカルロ・スタントンとは3度対戦してノーヒットに抑えたものの、第1打席のセンターフライと第3打席のレフトフライは甘い球をスタントンが打ち損じてくれたものだった。球速や絶対の決め球ではなく精密なコントロールが生命線となる前田にとって、制球の乱れは看過できるものではない。次回へ向けた重要な修正ポイントだろう。
これで前田の4月成績は3勝1敗、防御率1.41で確定。月間MVP争いはノーヒットノーランの快挙に加えて5勝0敗、防御率1.00のジェーク・アリエッタ(カブス)の後塵を拝することが確実で、選出の可能性はほぼ消えた。月間最優秀新人はというと、現地28日時点で両リーグ最多タイの9本塁打を放ち、打率.241、15打点を挙げているトレバー・ストーリー(ロッキーズ)との一騎打ち。こちらも劣勢は否めず、ストーリーが本塁打を2ケタに乗せれば、いっそう苦しくなる。
だがメジャーデビューからの5試合で、前田はメジャーでもトップクラスの結果を出せる投手だと証明してみせた。メジャーのボールやマウンド、中4日の先発や過酷な移動も問題なくこなしている。この適応力の高さは日本人選手がメジャー移籍する際に最も重要なこと。今後は疲労の蓄積やそれに伴う故障のリスクとも戦わねばならないが、ここまでの適応力を見る限りはいらぬ心配になりそうだ。