猛攻が奇跡を生む。

 前半16分、ダニエル・カルバハルが鋭い出足のインターセプトから右サイドを攻め上がる。一度は出したパスがカットされるが、それが前に突き進む足下に戻り、中に入れたクロスはやはり敵ディフェンダーに当たってしまう。しかしそれがファーサイドまで転がり、クリスティアーノ・ロナウドが押し込んだ。多分にラッキーな部分はあったが、それは前進によってつかみ得た得点機だった。

 そして1分後には、CKからまたしてもC・ロナウドがヘディングで叩き込み、勢いのまま、2-0と追いついたのである。

 一方のヴォルフスブルグは、エースのユリアン・ドラクスラーが前半で負傷交代。そもそもCL経験の少ない選手が多く(マドリーはCL優勝経験がある選手が半数以上)、心理的に受け身に立ってしまう。攻め立てられた消耗も激しく、1点返せばいいのだが、挽回できない。

 後半に入った77分だった。マドリーはルカ・モドリッチが中盤で不用意なパスを奪うと、猛然と前に持ち込んでファウルを受ける。そこで得たFKをC・ロナウドが叩き込み、逆転に成功。ボールは敵が作った壁の間をすり抜けており、普通は考えにくいことだったが、それもマドリーが与え続けた圧力の賜だったのかもしれない。

「マドリディスモの勝利だ!」

 センターバックのぺぺは高らかに言ったが、マドリディスモを訳すのは難しい。あえて言うなら王者としての自尊心さか。彼らにとって、ベルナベウでは常勝こそが流儀なのである。

文=小宮良之