北島の引退という一時代の終わりが訪れた一方で、10代の選手の活躍に新たな時代の芽吹きが感じられた大会となった。(写真:Getty Images)
北島の引退という一時代の終わりが訪れた一方で、10代の選手の活躍に新たな時代の芽吹きが感じられた大会となった。(写真:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 ひとつの時代が終わりを告げ、新しい時代の扉が開く。

 今までに何度もこういう場面はあったはずだが、今大会ほどそれを強く印象づけた大会は記憶にない。

 4月4日から10日まで東京辰巳国際水泳場で行われた、リオデジャネイロ五輪への切符を懸けた競泳の日本選手権。大会5日目の男子200メートル平泳ぎ決勝に出場した北島康介(日本コカ・コーラ)は、2日目の100メートルで2位に入ったが、日本水泳連盟が定めた派遣標準記録を決勝レースで突破できなかったため、この種目がリオに辿り着くための最後の道だった。

 まさに北島らしさ溢れるレース展開で、ラスト50メートルまで若手の渡辺一平(早稲田大学)と接戦を演じたが、最後に力尽きて5位に終わった。レース後、この種目で優勝して五輪内定を決めた小関也朱篤(ミキハウス)と渡辺の2人を会場が拍手で祝福したあと、北島がプールから上がり、一礼したときにひときわ大きな歓声が会場を覆い尽くす。

 ここで思い出されるのは、2000年のシドニー五輪の選考会での100メートル平泳ぎの決勝レースだ。当時平泳ぎの第一人者だった林亨(はやしあきら)を破って初の五輪代表を決めたのが、ほかでもない北島だった。タッチ後、何度もガッツポーズを繰り返しながら吠える北島の横で、うなだれながらコースロープにもたれかかる林の姿が、世間に世代交代を印象づけた。

次のページ