スポーツ選手にけがはつきものだ。生活がかかるプロスポーツ選手だからこそ、大けがをしたとき「名医」探しには必死になる。それは「失敗が許されない」というレベルではなく、再び第一線で活躍できる状態にまで戻れるかどうかの治療が求められる。そのため、まさに選手生命をかけた医師選びになる。

 1995年に右ひじを負傷したプロ野球・元巨人の桑田真澄は、アメリカのスポーツ整形外科医の権威、フランク・ジョーブ医師に執刀を委ねたが、実は日本の医師に頼む選択肢もあったと明かす。

「初めは日本の医師に診てもらいました。いまは日本の医師の技術がいちばん進んでいる』と言われ、3~4人の医師に助言をもらいながら最善の治療方法を探しました」

 慎重に医師選びを続け、桑田はジョーブ医師を訪ねる。なぜ最終的にジョーブ医師を選ぶことになったのか。桑田はこう続ける。

「ジョーブさんに手術のことについて正直に話をしました。『いま、日本の医師の実力はすごいそうです。日本の医師は、ジョーブさんの時代は終わった、とも言っています』と。普通なら、世界的な医師ですし、怒るんじゃないかと思いましたが違いました。『それでいいのです』と言うんです。『それぐらいの意気込みがないと医師の世界では一流になれないんだよ』と、あくまで僕の言葉に耳を傾けてくれました」

 そんな言葉にも心をひかれた桑田はジョーブ医師の手術に自らの野球人生を賭けた。

※週刊朝日 2012年7月20日号