家族葬の普及など、簡略化が進む葬儀業界で、霊きゅう車もシンプルなものが一般的になっている。神輿(みこし)を載せたような「宮型」から、リムジンのような「バン型」へ。宗教を問わず使用できる点も普及の一因だ。20年ほど前は米国で製造された「バン型」を輸入していたが、近年は国産車を改造した霊きゅう車が普及し、アジア圏へ輸出するメーカーも。ニッチながら変化に富む霊きゅう車市場の動向とは?
宮型の霊きゅう車、最近はめったにお目にかからない。その理由はいくつかある。
まず、葬儀コストの削減から、高額な宮型より手ごろなバン型のニーズが増した。また、国土交通省は道路運送車両の保安基準をより厳しくする方針を打ち出しており、でこぼこした装飾が施された「宮型」の存続が危ぶまれている現状がある。さらには、「いかにも葬祭」という雰囲気を忌避し、葬儀会場や火葬場周辺の住民への配慮から「宮型は出入り禁止」としている施設もあるそうだ。
バン型の霊きゅう車は、社会のニーズに応えて登場したといえる。このバン型、かつてはキャデラックなどを輸入していた。しかし、米国で改造された車両は故障が多く、輸入に伴う手続きが煩雑で、そのうえ高額と不満が多かった。そこで日本車を改造した特注車両が、国内市場の中心を占めるようになっていった。
霊きゅう車の設計・製造販売を手がける自動車メーカー、カワキタ(富山市)の河村賢整社長に業界の最新事情について聞いてみた。
「全国では約6000台の霊きゅう車が登録され、年間500台が更新されています。全国各地にある10社が市場を分け合っており、中でも手の込んだ改造ができるのはうちを含めて6社程度。霊きゅう車だけではなく、ワゴンを改造した搬送車や、遺体を清める設備のある湯灌(ゆかん)車も手掛けています。すべて、風習やニーズに合わせたオーダーメードです」