「団塊の世代」が高齢化し、亡くなるタイミングと時期を同じくして、葬儀業界は成長すると予想されている。ピークは2040年前後……。霊きゅう車の製造販売はニッチだが、拡大が見込める市場ではある。
ところで、霊きゅう車とはどのように作られるのか? カワキタの工場を訪ねると、車体を真っ二つに切ったトヨタや日産などの車両があった。切り離した車両の間、約160センチの部分は同じ鋼材で接合する。期間はおよそ3カ月。継ぎ足した部分に十分な強度を確保し、見た目も美しく仕上げるには高度な技術が求められる。プリウス、クラウン、ティアナ、フィールダー……ボルボ、ベンツなど基本的には、どのメーカーでも改造は可能らしい。
河村社長は長年、北陸に拠点を置く自動車関連会社で製造・販売を担ってきた。第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の原案となった『納棺夫日記』(青木新門著、桂書房)を読み、葬儀関係車両の事業を発案した。昨年7月に霊きゅう車などの特殊改造車両に特化した会社を設立して独立、1年間で22台を納車した。2年目も好調に受注を伸ばしており、香港の葬儀会社とも代理店契約が成立、来年2月には香港・マカオへ輸出する。
「排ガス規制の強化により、アジアでも環境に配慮した車へのニーズは高まっている。香港は日本と同じ右ハンドルなので輸出市場として参入しやすい」(河村社長)
誰もが一度はお世話になる霊きゅう車、いつの間にかスタイリッシュな国際派に変貌を遂げていたとは……。意外だった。
(ライター・若林 朋子)