内村航平
内村航平
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 体操日本代表が快挙を成し遂げた。10月29日早朝(日本時間)、イギリス・グラスゴーで行われている世界体操選手権の男子団体で優勝、37年ぶりの金メダルを獲得したのだ。2位は地元イギリス、日本最大のライバル・中国は3位となった。

 内村航平を筆頭に、日本代表が悲願としていた団体優勝。だが今回は最後まで予断を許さない展開だった。

 試合序盤、日本はかなり好調なスタートを切る。日本の得点源である「ゆか」では内村と白井健三、そして今回、急遽出場が決まった早坂尚人が完璧に近い演技を披露した。続く「あん馬」でも、今回が初代表となる萱和磨がしっかりとその役目を果たし、得点を積み重ねる。足首のケガが懸念されていた加藤凌平も、「あん馬」・「つり輪」をしっかりまとめた。中国と競りながらも日本はこの時点でトップに立っており、理想的な形でラスト2種目を迎えた。

 ところが、ここで波乱に見舞われる。まず、「平行棒」で田中佑典が落下のミス。続く内村がノーミスの演技をして立て直すも、最終種目の「鉄棒」でも田中が落下。またこの時、全体の順位にも変動が起こる。イギリスがゆかで点数を伸ばし、最終種目を終えて暫定トップにおどり出たのだ。

 日本は最終演技者の内村が「13.993」を出せば優勝、という局面を迎える。鉄棒でコンスタントに15点台を出している内村にとっては、簡単に越えられるハードルに思えた。しかし、ここで内村が痛恨のミス。離れ技・カッシーナで落下するという、ここ数年見られないようなミスだった。

 この得点によって金メダルの行方が決まる日本は祈るような思いで得点を待つ。そして表示された内村の得点は「14.466点」。波乱に満ちた展開ながら、日本は悲願だった団体金メダルを獲得した。

 しかし、自身のミスもあってか、内村は試合後に複雑な表情を見せる。

「鉄棒は最後絶対に決めたかったので、また課題ができましたね。金メダルを獲ることはできたんですけど、自分的には、そこに内容が伴っていないといけないのかなと思っているので。すごくうれしいですけど、来年までにもっともっとがんばっていきたいですね」

 また、鉄棒については「正直ミスをしてしまったので、勝てなくてもしょうがないかなっていう気持ちもあった」と心情を吐露した。

 課題は多かったものの、悲願の団体金メダルを手にした日本。来年のリオ五輪に向けても、大きな収穫になったことには違いない。

(ライター・横田 泉)