ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会1リーグB組が10日3日、日本(世界ランキング12位)はサモア(同11位)を26―5で破った。通算成績を2勝1敗として、悲願のベスト8進出に希望をつないだ。
サモアはフィジカルで日本を大きく上回るチーム。エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが「世界で最もフィジカルでパワフルなチーム」と評するように、個々の能力では日本選手を圧倒する。
そんなサモアに対し、日本は序盤から得点を重ねる。開始8分でペナルティキックを得ると、五郎丸がこれを決めて先制。この後も、このパターンで日本は得点を重ね、前半終了時点で日本は20―0と大きくリードする。後半も流れは終始日本。途中何度か攻め込まれるシーンもあったものの、これをなんとか乗り切り5失点に抑える。終わってみれば、26―5の完全勝利だった。
日本が大勝を挙げた理由は何だったのか。2000年に日本代表も経験した、日本ラグビー協会・普及競技力向上委員会の川合レオさんはこう話す。
「まず、反則が少なかったのがよかったと思います。ラグビーはペナルティがあると崩れてしまうスポーツですが、日本が最後まで冷静に、規律を守ったのが大きかった。日本人の真面目さが出たと思います」
また、プレーの面では全体的に「低い位置でのプレー」ができたことが大きいという。
「ラグビーではタックルなどで低いプレーというのが重要になってくるんですが、これを80分間続けるのはすごく苦しいんです。しかし今回の試合では、80分間、日本がそれを続けることができた。前半終了間際、山田選手が決めたトライも低い位置でのプレーでした」
これに加えて、日本の「セットプレーの強さ」も見えた試合だと、川合さんは語る。これについては、現在、7人制ラグビーチーム「湘南ベルマーレ」でGMを務める小畑江至さんも同じように話す。
「前半から、スクラムなどのセットプレーが安定したいたことが大きいですね。そしてやはり、反則が少なかったこと。苦しい時でも規律を守ることができるというのは、練習の成果だと思います」
今回、勝敗に関わる要因となった反則。実はこれには、チームの気質も関係しているようだ。前出の川合さんは言う。
「サモアは気質的に熱くなりやすく、プレー中に冷静さを欠いてしまうところが弱点でもあったんです。最後まで冷静に、ほとんど反則することなくプレーした日本とは真逆の性質と言えるかもしれません。今回はその弱点が出て、サモアが反則をする、日本がペナルティキックを得る、五郎丸が決める、という形がうまくはまりましたね」
ベスト8による決勝トーナメントは、それぞれの組で上位2チームが進出する。日本は勝ち点を8に伸ばし、B組の3位に浮上した。南アフリカがスコットランドを34-16で破り、勝ち点11とした。一方、スコットランドは勝ち点10で2位に転落した。
日本は12日に1次リーグ最終戦で米国と対戦するが、気になるのは他国の勝敗だ。南アフリカ対米国戦(7日)、サモア対スコットランド戦(10日)の勝敗次第では、米国戦の前に日本のリーグ戦敗退が決まる恐れもある。とはいえ、サモア戦での快勝が、決勝トーナメント進出を近づけたのは確か。悲願達成に向けて、日本は前進するのみだ。
(ライター・横田 泉)