「受験は人生の分岐点 彼らから若さをもらえる」元大学教授から塾講師に華麗に転身した小田健司さん・78歳(神奈川県葉山町)
「受験は人生の分岐点 彼らから若さをもらえる」
元大学教授から塾講師に華麗に転身した小田健司さん・78歳(神奈川県葉山町)
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<私の健康アイテム>健康のために始めたウォーキング。足を支えるのがこのミズノ製のウォーキングシューズだ。ゴアテックス素材のため、雨でも快適に長い距離を歩けるという。今使っているので3足目。今後もこのシューズを使い続けるつもりだ
<私の健康アイテム>
健康のために始めたウォーキング。足を支えるのがこのミズノ製のウォーキングシューズだ。ゴアテックス素材のため、雨でも快適に長い距離を歩けるという。今使っているので3足目。今後もこのシューズを使い続けるつもりだ
海岸を歩くときは足の負担を考えて、波打ち際の軟らかい部分を歩いている
海岸を歩くときは足の負担を考えて、波打ち際の軟らかい部分を歩いている

 元大学教授という経験を生かして地元の高校生を難関大や医学科に合格させる凄腕の塾講師がいる。神奈川県葉山町で自宅の一室を使い、少人数塾の「湘南葉山塾」を営む小田健司さん(78)だ。

 日本の理系大学の最高峰である東京工業大学の教職を約40年間務め、定年を機に神奈川県鎌倉市で大学受験のための数学と物理の塾を始めた。最初は大船駅の近くにある進学校の生徒を取り込めると期待していたが、実際は何年も生徒が集まらなくて苦労の連続だったという。

 小田さんはこう振り返る。

「最初は実績もなかったので、最初の数年間は赤字でした。それでも、生徒たちに『自分で考え、理解すること』を伝えたいと、少ない生徒に粘り強く授業を続けました」

 塾を始めた2年後。3年生の一人が初めて医学科に合格してから、塾の経営は軌道に乗り始めた。2001年には塾生の一人が念願だった東京大学理科一類に合格。これによって、口コミで塾の評判が広がり、最盛期は20人の生徒を抱えるまでに成長した。在籍した生徒は100人を数え、現在までに東大に5人、東工大に4人、医学科に6人も合格者を出しているという。

「授業は生徒に自ら問題を解かせて、分からないところを解説するという方法をとっています。そのぶん、授業というよりもディスカッションが多くなることもあり、場合によっては問題を解かずにずっと意見を言い合うときもありますよ」(小田さん)

 高校生に負けない体力も必要だ。若さを保つ秘訣は、葉山町の自宅から鎌倉市までの約8キロものウォーキング。10年に胃がんの手術をしてから塾の場所を自宅に移し、昨年はウォーキングの回数が1年間で150回を数えた。

 来年には80歳を迎える小田さんだが、熱意はまったく衰えない。

「大学受験というのは子どもたちにとって、人生のターニングポイントです。そこに関われるというのは幸せなこと。年齢は重ねても、頭はまだまだ子どもたちには負けませんよ」(同)

※週刊朝日MOOK「人生の再設計ガイド 70歳からのお金と暮らし」より抜粋