厳しく断罪する裁判長の声にも動じることがなかった被告人――。
「主文。被告人を懲役2年に処す。3年間、その刑の執行を猶予する」
歌手のASKA(本名・宮崎重明)の知人で、ともに覚せい剤取締法違反の罪に問われた元会社員・栩内香澄美(とちない・かすみ)被告に、東京地裁は13日、懲役2年・執行猶予3年(求刑懲役2年)を言い渡した。
上下黒のツーピース姿の栩内被告は、いつものように黒縁のメガネをし、肩よりやや長い茶髪をきれいに整えていた。6センチほどのハイヒールを履き、3人の弁護士と談笑しながら入廷してきた。
これまでの公判で、
「自分の意思で覚せい剤を使用したことはありません」
「覚せい剤はASKA元被告に使用させられた可能性がある」
などと、一貫して無罪を主張してきた栩内被告。だが判決では次のように指摘された。
「尿鑑定と1回目の毛髪鑑定が陽性だった事実だけでも、特段の事情がない限り覚せい剤の摂取があったと推認できる」
「少なくとも事後的にクスリの作用や身体の異常を感じるはずで『具体的な心当たりがない』といった被告人の供述は不自然」
否認してきた主張が認められず有罪が認定されたが、最後に裁判長が「裁判を通じ覚せい剤との関係を断ち切る自覚を持つにいたった、と期待して刑の執行を猶予した」と語ると、栩内被告は深く頷き、笑顔のような晴れやかな表情を見せた。
これまでの法廷で涙を見せたこともある栩内被告はこの日、終始一貫して柔らかな顔つきでほほ笑むことさえあった。その微笑の意味するところは何なのだろうか。
閉廷後、傍聴席から「控訴するんですか」との声が飛んだが、栩内被告は何も答えず法廷をあとにした。有罪判決は下ったが、覚せい剤使用の動機や入手経路、使用方法が解明されることはなかった。一審判決後、14日以内に被告側は控訴することができる。
(ジャーナリスト・青柳雄介)