逆転負けで優勝を逃して、崩れ落ちた浦和レッズの選手たち(c)朝日新聞社 @@写禁
逆転負けで優勝を逃して、崩れ落ちた浦和レッズの選手たち(c)朝日新聞社 @@写禁

 「歴史は繰り返す」とは古代ローマの歴史家クルティウス・ルフスの言葉だが、浦和のサポーターにとって2014年シーズンは7年前の“悪夢の再現”で幕を閉じた。

 11月6日の最終節を前に、優勝の可能性があったのはG大阪、浦和、鹿島の3チーム。首位のG大阪は勝ち点62で得失点差は+28。前節2位に転落した浦和はG大阪と同じ勝ち点62ながら、得失点+21と7点の差がある。G大阪は勝てば自力優勝が決まる。浦和は勝利した上で、G大阪が敗れるか引き分けという他力本願だ。

 そして3位の鹿島は勝ち点60(得失点差+26)のため、逆転優勝を果たすにはG大阪と浦和の敗戦か絶対条件となり、その上で4位の鳥栖戦には勝利が必要となる。もしも上位2チームが引き分けた場合は、2点差以上で勝てば同じ勝ち点ながら得失点差で上回って鹿島の優勝となるが、一番厳しい状況であることに変わりはない。

 12月6日午後3時30分過ぎにキックオフされた試合で、最初にスコアが動いたのは浦和対名古屋戦だった。開始2分に左CKから槙野がヘッドで先制点を奪い浦和がリードする。続いて動きがあったのは鹿島対鳥栖戦で、6分に鳥栖の高橋が先制点を奪取。その頃、徳島で戦っているG大阪はまだ1本もシュートを打っていなかった。

 結果から言うと、鹿島は1点を返せず0-1の敗戦で勝ち点は60のまま。G大阪は徳島と0-0のドローで勝ち点を63に伸ばした。そして浦和は72分まで1-0とリードしていたため暫定首位に返り咲いたが、名古屋の牟田に同点ゴールを許すと、89分にはパスミスから決勝点を奪われて1-2の逆転負け。勝ち点は62でストップし、ランナーズアップに甘んじた。

 7年前、浦和は第20節から首位を守りながら、第33節で2位の鹿島に敗れて勝ち点1差に詰め寄られた(浦和は勝ち点70、鹿島は勝ち点69)。それでも最終戦の横浜FCに勝てば、リーグ連覇が決まる有利な状況。なにしろ横浜FCは最下位でJ2降格が決まっていたからだ。ところがこの試合を0-1で落としてしまう。鹿島は清水に3-0で勝って逆転優勝を果たしたのだった。

 そして今シーズン、浦和は第19節より首位をキープしたものの、第32節のG大阪戦で0-2と敗れて勝ち点2差に詰め寄られると、第33節の鳥栖戦はロスタイムの失点で2位に転落した。それでも第34節の名古屋戦に勝てば逆転優勝の可能性があったものの、リードを守りきれず8年ぶりのリーグ制覇は幻と終わったのだった。

 今シーズンの浦和の躍進は堅固な守備にある。昨シーズンの失点56が、今シーズンは32まで減った。7試合連続無失点に加え、16試合も対戦相手を完封し、1-0の勝利が8試合もある。堅守で逃げ切るパターンだったが、第30節の鹿島戦で得点源の興梠(12ゴール)が骨折したことでゲームプランが狂った。代わりに1トップを任された李忠成は第31節から4試合連続してスタメン起用されたものの、ゴールを決めることはできなかった。彼は1トップというよりシャドーストライカーのため、興梠の離脱により絶対的なストライカーの不在が深刻な得点減を招いたと言えよう。

 さらに第32節の直接対決、G大阪戦でペトロヴィッチ監督は0-0から先に選手交代で勝負を挑んだ。これは結果論になるが、本来なら勝ち点5差の2位G大阪こそ勝利が必要だった。ところが長谷川監督は我慢をして、「相手がカードを切ったので、こちらも動いた」とリンス、倉田、佐藤を試合終盤に矢継ぎ早に投入し、佐藤と倉田がゴール(リンスはアシスト)と結果を残した。

 この試合で動かずドローで終えていれば、続く鳥栖戦と最終節の名古屋戦は違った展開で迎えられただけに、浦和にとっては悔やまれるG大阪戦と言えるだろう。

 覆水盆に返らずではないが、終わったことを批判しても意味はない。ここは素直にG大阪の優勝をたたえるべきだろうが、個人的にはかなりの危機感もある。ここ3試合、浦和の試合を見ていて、あまりに消極的な試合運びに、優勝チームとしての資格があるのかと疑問に思った。勝たなければいけないのに、1点リードしたら自陣でパスをつなぐだけに終始して、名古屋の反撃を招いていた。

 それは浦和に限らず、優勝を争う上位3チームが最終節で勝てないことにもJリーグに寂しさを感じた。勝たなければ何も手にできないのに、リスクを冒して攻めようとしない。リスクを冒さないのは日本人のメンタリティかもしれないが、このあたりを変えていかないと日本代表の躍進にもつながらないはずだ。

 G大阪がJ2から昇格してリーグ優勝したのは2011年の柏に続く快挙である。彼らがナビスコ杯に続き、決勝に進出している天皇杯も制して3冠を達成すれば、恐らく世界的にも例を見ないギネス級の偉業である。裏を返せば、それだけ団子状態の国内リーグと言うか、低レベルの日本サッカーと言うことになる。来シーズンこそ浦和の復権を期待したいものの、“持ってない”指揮官で大丈夫かどうか、心配は尽きない。

(サッカージャーナリスト・六川亨)