「抜本的な財政・社会保障改革を」と訴える小黒一正・法政大学准教授(撮影/尾崎誠)
「抜本的な財政・社会保障改革を」と訴える小黒一正・法政大学准教授(撮影/尾崎誠)
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 11月21日の衆議院解散は、消費税増税による景気の下振れ懸念を受けての「増税一年半延期の是非」を問うものだと思われている。だが、本当の争点はそこにはない。

『財政危機の深層――増税・年金・赤字国債を問う』(NHK出版新書)の著者で法政大学准教授の小黒一正氏によると、「仮に予定通り2015年10月に消費税率10%への増税が実施されても、年間約3兆円のペースで膨らみ続ける社会保障給付費(年金・介護・医療)に大鉈を振るわない限り、財政を安定化するために必要な消費税率は30%を越える」。この理由は単純で、消費税1%の増税で見込める税収増は約2.7兆円といわれており、消費税率を2%引き上げても、その分は約2年間で社会保障の膨張に吸収されてしまうからだ。

「消費税増税はあくまで止血剤にすぎないが、傷口を少しでも小さくすることを考えれば増税先送りはしないほうがよい。マスコミでは総選挙の争点として増税の1年半延期の是非に注目が集まっているが、それよりも大きな争点は『異次元緩和』の是非だ」(小黒氏)。

 増税慎重論が強まるなか、10月末に行われた大規模な「サプライズ緩和」。景気浮揚だけでなく、増税サポートの思惑もあって決断されたとの見方もあるが、日銀は増税先送りでハシゴを外された格好だ。

「量的緩和の目的がデフレ脱却でなく、『財政ファイナンス』になると話が違ってくる。財政ファイナンスとは、財政赤字を穴埋めするため、日銀が国債を大量に買い取ることだ。節度を失った量的緩和が続けば、海外や市場から、実質的に財政ファイナンスになっていると見なされても仕方ない。これは財政法5条で禁止されている『日銀の国債直接引き受け』とは若干異なるものの、デフレを脱却し景気が回復軌道に乗り始めた場合、最悪ケースでは、物価上昇率が20%を超えるような高インフレーションが引き起こされる可能性もある。いずれにせよ、長い期間、バラマキの財政政策やモルヒネのごとき急場しのぎの金融政策に頼り、必要な改革を怠ってきた結果がいまの日本経済の姿。抜本的な財政・社会保障改革をするしか道はない」(小黒氏)。

 しかし、こうした「バラマキ」「モルヒネ」政策を容認しているのは、我々有権者だともいえる。12月14日、一票の権利を行使し、国の方向性を決断するときである。本当の争点はどこにあるのか、自分たちさえよければ次世代へのツケ送りをしてもいいのか、この国の行く末を考えて一票を投じたいものだ。

 なお、12月25日(木)に、八重洲ブックセンター本店で、小黒一正氏、小幡績氏、城繁幸氏による公開討論会「どうなる2015! 新内閣で経済は? 財政は? 雇用は?」(仮)を開催予定だという。2015年の日本がどうなっていくのか、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがだろうか。