作家でテレビ・コメンテーターとしても活躍する室井佑月氏は、増税をめぐる政局の混乱を受け、日本は「変わる決意」をするべきだと語気を強める。

*  *  *

 増税はもう決められていたことだったのか。

 たしか、社会保障改革をしなきゃという目的があったはずだが、そっちはうやむやになった。しかし、するという前提での、増税についての話し合いがつづいている。

 税収が少ないならば、まず先に国をまわしていく運用費を削らねば駄目だろう。

 3日前、ラジオ番組でご一緒した姜尚中さんの言葉が印象的だった。

 彼は、

「東日本大震災が起こった3・11以降、変わる決意のない日本はあり得ない」

 というようなことをいっていた。

 姜さんはエネルギー問題について述べたんだけど、あたしはほかのこともすべてそうだと思った。

 なぜこの国の政治家や官僚は、変わるという決意をしないんだろうか。

 この国の国際競争力ははっきりと低下していっている。

 生活保護受給者は210万人を突破し、受給資格があるとみなされても貰っていない人は200万人だ。

 徐々にだけれど、確実に、この国の「普通」の基準が下がってきている。

 みんなそれに気づきだしている。

 すべてを大きく変えないと、このまま失業者は増え、社会保障費もますます膨らんでいくのかもしれない。

 そしたら、税金で食っている人々だって、いずれは破綻することになる。ないところから搾り取ろうとしたって、限界があるんだから。

 政治家や官僚たちは、変えざるをえなくなるその日まで、頑なに今の権利を守っていくのだろうか。まるで彼らは、変わるというのが悪いことだと思っているようにさえ感じる。

 政治家や官僚が変えざるをえないと判断するとき、我々の生活はどうなっているだろう。

※週刊朝日 2012年7月6日号

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら