東日本大震災から9年。
【写真】「東日本大震災・総理大臣官邸献花式」で黙祷する安倍総理
被災地では、高速道路や鉄道などが再開した。公共事業も進捗し、物的なインフラは、時間とともに確実に回復してきた。
しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理は終わっていない。廃炉作業、汚染土・汚染水処理などは、遅々として進まず、終わりの見えない状況だ。
いまだに避難している住民も、大本営(政府)発表の数字でも福島中心に4万7千人。帰還したくてもできない地域は残されたまま。今さら故郷に戻れないという人も日に日に増える。
一方、そんなこととは関係なく、「復興五輪」と銘打った東京五輪の聖火リレーが来週から始まる。その起点は、福島県楢葉町・広野町にあるJヴィレッジだ。その後の聖火リレーの中継点も、事故の傷痕など感じさせない、きれいに整備された区域が中心だという。世界に「復興」をアピールする「だまし絵」だ。
思えば、東京五輪は、2013年9月のブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会での安倍総理の歴史的な大ウソによって誘致された。福島原発事故から2年半後の当時、事故のインパクトは大きく、「東京」五輪といっても、「放射能は大丈夫か」と各国関係者や選手たちは心配した。
そこで、安倍総理は一世一代の賭けに出た。すぐにバレてしまうような嘘の演説で、各国を「説得」しようとしたのだ。
「フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています(アンダーコントロール)。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」「汚染水の影響は、福島第一原発の0・3平方キロメートルの港湾内で、完全にブロックされています」
いずれも、とんでもない大ウソだ。それがばれるのに1日もあれば十分だったが、安倍総理は確信犯だった。総会で東京が選ばれるまでの間さえ、なんとかもてばよいと考えたのだろう。
福島事故を矮小化することで各国の不安感を取り除き、五輪を東京に持ってくることに成功したのだ。