福山議員が突きつけたのは、同じホテルの同じ場所で開催された600人規模の宴会の明細書だった。ホテル側への配慮もあり飲み物の単価は黒塗りになっている。前夜祭の現場となった「鶴の間」の室料は明細に書かれている通り、18時から20時の2時間で450万円。前夜祭で動いたお金の総額は、会費5千円で800人が参加しているので「400万円」。同日の答弁で、安倍首相は消費税とサービス料は5千円に含まれていると明言。つまり、この時点で800人分の「料理」と「飲み物」の代金がどう考えても捻出できないのだ。

「総理、料理は無料ですか?」

 この福山議員の質問の後、答弁に立った安倍首相は明らかに動揺した様子だった。安倍首相の発言をそのまま紹介する。

「このニューオータニのこの明細、これはニューオータニが出したんですか。ニューオータニから直接……。それは違いますよね。(中略)その中においてですね、その中において、この中身についてでございますが、これはですね、基本的にどういうこの中身になっているか」

「料理はタダですか?」という質問の答えになっていない。会場からのヤジも飛ぶ。安倍首相の発言はこう続く。

「つまり、立食なのか、あるいはこれ着席なのかということでこれかなり違うわけでありまして、(中略)言わば立食のパーティー、立食のパーティーでですね、一人一人に相当の量を出さなければいけないものと、着席、着席の量とは、これは、これはかなり根本的に私は違うのではないかということでございまして」

 この回答に対して福山議員はこう畳み掛ける。

「これ、2時間の正規の料理、料金なので、立食も着席も変わりません。部屋代ですから、全く施設利用料は変わりません」

 会場の与党席からも失笑が漏れる。

「うちも政治資金パーティーなどホテルはよく使いますよ。ただ、明細書もなければ、領収書もない、などということは絶対にありえない。なぜ、この前夜祭だけをそうしたのか。これは、違法かどうかという以前に脱法と疑われても致し方がない」

 ある元自民党幹部はこう首をかしげ、続ける。

「自らは潔白だと証明できるのは首相本人しかいない。であるならば、その確証となるホテル側の明細書、もしくは領収書を地元に問い合わせて国会に提出し、自らにかけられた疑惑を払拭すればいいだけのこと」

(編集部・中原一歩)

AERA 2020年3月23日号より抜粋