内藤さんは「苛烈な働き方をしているのは医師に限らない」とし、こう続ける。

「日本の労働者全般の基準が長時間労働で、育児をしない前提の男性労働者像にフィックスされていることがそもそもの問題です。今回の判決を労働者全般の働き方を問うものとして労働界が受け止めることを期待します」

 今回の判決は、企業の採用にも一石を投じる可能性がある。

 16年には女性活躍推進法が施行され、従業員に占める女性の割合や採用の女性比率、男女別の倍率といった項目のうち一つ以上を開示するよう大企業に義務づけた。だが最低限の項目しか公開しないなど、情報の開示に消極的な企業も多いのが実情だ。企業の募集や採用段階での男女差別は男女雇用機会均等法で禁止されているが、大学入試と同様、採用選考でも女性応募者への「減点」が行われているとの指摘は尽きない。

 内藤さんは「採用後の昇進や賃金差別と比べ、採用時の男女差別は立証が困難なため是正されてこなかった。男女別の採用倍率を必ず公表するよう義務付けるなど、採用時の男女差別を是正する施策が必要だ」と訴える。(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年3月23日号より抜粋

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