東京地裁の判決を受け記者会見した原告弁護団。消費者保護の観点からも画期的な判決となった/3月6日、東京都内 (c)朝日新聞社
東京地裁の判決を受け記者会見した原告弁護団。消費者保護の観点からも画期的な判決となった/3月6日、東京都内 (c)朝日新聞社
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過去の入試での女性や浪人生への差別が違法と認定された東京医科大学。その「門戸」は今、正しく開かれているだろうか(c)朝日新聞社
過去の入試での女性や浪人生への差別が違法と認定された東京医科大学。その「門戸」は今、正しく開かれているだろうか(c)朝日新聞社
AERA 2020年3月23日号より
AERA 2020年3月23日号より

 東京医科大学が女子や浪人生を差別していた不正入試問題で、東京地裁判決は、不利益を被った受験生に受験料などを返還するよう大学側に命じた。今回の判決は、入試以外のあらゆる場での女性差別に警鐘を鳴らすものとなりそうだ。AERA 2020年3月23日号では、今回の訴訟の社会的な意義に迫った。

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 東京医大をめぐっては、今回の訴訟とは別に元受験生の女性38人が「性別というコントロールできない属性を理由に不利に扱われた」として、同大に慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。弁護団事務局長の山崎新弁護士は、今回の判決を追い風と受け止める。

「不正が認められた2次試験の受験生だけでなく、1次試験で不合格となった受験生に対しても違法な差別が行われ、法的保護に値すると認められました。この事実認定は、受験生の精神的苦痛に対する賠償を求めている私たちの主張の補強材料にもなります」

 その上で山崎弁護士は、女性差別防止の観点から判決の意義をこう強調する。

「憲法の法の下の平等に照らして違法判決を導いた点は意義深い。就職や昇進などさまざまな形で残る女性差別に対する社会全体への警鐘にもなります」

 一方、「医師の働き方に対する警鐘にならなければならない」と話すのは労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員だ。

 一連の医大の不正入試問題の背景にあるのは、医師の働き方の問題だ。医師の多くが、長時間労働で休みが取れない苛烈な労働環境にあることが、「育児責任を担うことが多い」などとして女性医師の採用を敬遠する誤った風潮につながってきた。そうした労働環境のゆがみが、入り口である医学部入試の時点で女性差別という形で露呈した、と内藤さんはみる。

「医師の働き方は苛烈だから、女性の採用が少ないのは仕方がない、との認識が社会に一定程度あり、それが入り口である大学入試の不正にもつながっていました。しかし今回の判決で、それは違法だということが明示されました。判決を重視し、不正入試の要因に連なる医師の働き方自体を変えなければなりません」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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