条例案では当初、平日60分までの利用時間などについては、家庭におけるルールづくりの「基準」としていた。条例案への懸念などを受けて、基準という言葉を「目安」にするなど、規制色を弱める修整をした。そもそも罰則はなく、条例の実効性は乏しいとみられている。
「実効性がないので大丈夫だという見方もありますが、それなら条例をつくる必要がそもそもないはずです。推進した人たちの目的がゲームの規制ならば、修整に応じなかったでしょう。家庭はこうあるべきだという条例をつくること自体が、本当の目的だったのだと思います。『家庭教育支援条例』が複数の自治体で成立し、『家庭教育支援法』をつくろうという動きもあります。今回の条例は、公(おおやけ)が家庭に介入しようという動きの一つなのではないでしょうか」(佐藤弁護士)
この条例案を巡っては、20代の県職員もネットで、「個人的な意見」だとして、次のように反対を訴えていた。
「それぞれの家庭の方針は保護者の良心と信条によるべきもので、県民の家庭の在り方まで規定しようとするのは公権力の過剰な介入です」
香川県のイメージが低下するリスクも、この県職員は指摘していた。
香川県はネット上で当初はネタにされていた「うどん県」という名称を公式に採用するなど、ネットでの情報発信に力を入れてきた。
18年からは、人気ゲーム「ポケットモンスター」のキャラクター「ヤドン」と連携。うどんに語感が似ているヤドンを「うどん県PR団」に任命し、スマホ向けゲーム「ポケモンGO」とのコラボ企画もあった。ヤドンのマンホールのふたが県内各地に設置され、昨年12月の「年明けうどん」のイベントにもヤドンは登場していた。条例の成立で、こうしたイメージアップ戦略が崩れてしまうというのだ。
実際、ネット上ではゲームファンらを中心に、条例への疑問の声が高まる。ツイッターではこんな書き込みが続いている。
「ゲーム規制条例とかで香川の印象悪くなってるの悲しいなぁ」
「ゲーム1日1時間条例を可決しておいてポケモンのネームバリューは使う模様・・・ヤドンの運命やいかに」
「ヤドンの力で活性化した香川県がゲーム規制条例を成立させたって聞いて悲しくなってる」
この条例にはネットサービス事業者に、事実上の「自主規制」を求める内容もある。
「特定電気通信役務提供者及び端末設備の販売又は貸付けを業とする者は、その事業活動を行うに当たって、フィルタリングソフトウェアの活用その他適切な方法により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする」