弁護士は、訴訟を提起した理由として、国有地売却をめぐり安倍晋三首相が「私や妻が関係していれば首相も国会議員もやめる」などとした国会答弁を受けて佐川氏が発案し、主導的立場から改ざんの指示を行ったと主張。国は改ざんを強制せず長時間労働をさせない義務を怠ったとして、国に約1億700万円を請求している。一方、佐川氏は違法性の程度が著しい職権の乱用を行い、これは公務員としての職務ではなく個人の不法行為だなどとして、佐川氏に550万円の賠償を求めた。

 妻はこれまで情報公開を求めたが、開示された文書の大半が黒塗り。弁護士はこう訴えた。

「妻は佐川氏の自宅まで訪ねた。インターホンを何度も押したが応答はなかった。佐川氏が誠実な対応をすれば、訴訟も思いとどまったかもしれない。情報公開も含め、財務省の不誠実な対応で残された手段が訴訟しかないとなった」

 財務省や近畿財務局の不誠実な対応は妻や遺族にとって耐えがたいものだったという。赤木さんが自殺後、近畿財務局から「遺書を見せてくれ」と申し入れがあったという。

 あまりの冷たい対応に妻は憤慨して、応じなかった。

 麻生太郎財務相が「お参りしたい」という意向を伝えた時に「来てほしい」と妻は答えたという。だが、麻生氏は国会答弁で、「ご遺族は来てほしくないと言っているので伺っていない」と答弁していた。

 今では、近畿財務局や財務省の職員らが、焼香に来ることもないという。

 財務省は報告書で改ざんを認めた。一方、佐川氏らは刑事告発を受けたが、不起訴となっている。

 弁護士によれば、赤木さんは生前、改ざんの経緯を詳細にメモしたクリアファイルを残していたという。それが最重要な物証になるという。

「裁判の中で、裁判所に文書提出命令などを求めたい。クリアファイルは、刑事告発を受けた時、近畿財務局が大阪地検特捜部に提出している。不起訴となって、近畿財務局に戻っているのではないのか」

 記者会見で弁護士は、赤木さんの愛読書をデスクに並べた。

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