大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 病院で医師から治療の説明を受け、患者がわからないことを質問すると、明確な回答が返ってこない場面があります。医療には不確かな部分も多いため、医師が答えにくいこともありますが、だからこそ、医師と患者とのコミュニケーションが重要となります。『心にしみる皮膚の話』の著者で、京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が、友人の事例をもとに患者とのコミュニケーションについて考えます。

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 天才ピアニストの少女に脳腫瘍が見つかり、いますぐに手術をしなければ死んでしまう。しかし、手術をすれば今までのようにはピアノが弾けなくなるかもしれない。

 テレビドラマではこういったシチュエーションで、医者と患者の苦悩や葛藤が描かれます。

 こういう場面では、最終的に手術は無事成功し、少女は厳しいリハビリを乗り越え、美しいピアノの音色を響かせる。そんな展開となりそうですが、実際の臨床現場ではすべてがうまくいくわけではありません。

 ご本人の許可を得て、友人の体験を紹介します(関係者に迷惑がかからないように、事実を一部変更しています)。

 白河さん(仮名・女性)の父親は82歳。認知症が進行し、自分の娘の顔も分からない状態だといいます。温和だった性格も、認知症が進んでからは暴言・暴行が増え、しかもマラソンが趣味だったために、群馬県の自宅から80キロ先までひとり歩きし、何度か警察のお世話になったそうです。

 東京で仕事をしている白河さんは、普段の父親の介護は母親任せでした。ひとり歩きが激しくなったため、介護療養型医療施設に入所。これは母親の希望でもあったそうです。

 そんなある日、施設の廊下を歩いていた父親が転倒。頭を強打し、スタッフが見たところ「言動がいつもと違う」と判断し、市内の総合病院へ救急搬送されました。病院でМRIを撮ったところ、認知症の父親に脳腫瘍のようなものが発覚されました。

 手術をすれば助かる可能性がある。でも、後遺症が残る危険性もある。

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