地域医療に貢献してきたことなどを訴えていた東京都済生会中央病院の高木誠院長はこう語る。

「リストから外された理由はよくわかりません。昨年9月の公表後に風評被害を受けたこともあって、厚労省は最初からきちんと検討すべきだったのではないかと感じました」

 情報公開も十分なされてはいない。厚労省は対象病院440のデータを都道府県には示したが、昨年9月のようにホームページなどで詳細を公表していない。公立・公的病院だけでなく民間も含めた統廃合が必要だとして、民間病院のデータも都道府県に示したが、こちらも事実上非公表だ。

 厚労省は昨年9月の発表で強い反発を招いたため、情報公開を制限したいようだ。私たちの税金や保険料で運営されている病院の統廃合について、全体像が見えないまま議論が進もうとしている。

 厚労省からボールを投げられた都道府県も、対応に困っている。

「厚労省から示されたデータをそのまま出すと、病院関係者の反発を招く可能性もあるので公表しにくい。患者さんらに不安を与えないよう慎重な議論が必要です」(ある県の担当者)

 前出の高木院長は、地域ごとの状況に応じて議論すべきだと訴える。

「地域医療構想の議論は病床の削減数など、数合わせばかりに目が向けられている印象です。国が減らそうとしている高度急性期や急性期の病床は、地域にとっては不可欠。診療実績などのデータだけでなく、それぞれの病院が培ってきた特徴や業績、存在価値などをもっと踏まえるべきです」

 コロナショックで医療を巡る状況は大きく変わった。加藤勝信厚労相は3月3日の参院予算委員会で次のように答弁している。

「感染症病床全体の9割以上を公立・公的医療機関が担う。感染症対策を含めた様々な機能を発揮してもらうことを含めて、(統廃合の)議論をしてもらっている。それぞれの地域でこうした機能を持っているものはしっかり残してもらう」

 地域医療構想のとりまとめ期限は、当初の今年9月から先延ばしされる方向だ。医療費を抑えつつ、私たちの命を守る拠点をいかに守るか。いまの病院の危機的状況も踏まえて、議論していかなければならない。(本誌・池田正史、多田敏男)

週刊朝日  2020年4月10日号

[AERA最新号はこちら]