三谷:僕はこの香取さんのキャラクターを世界に広げていきたいなと思っています。今も取材で一緒に写真を撮っていると、ゆるキャラと一緒にいるような気分になりましたけども(笑)。香取さんはどうですか、やってみて。
香取:すごく楽しいです。
三谷:僕の作品の香取さんって、わりとニュートラルで、周りに振り回されるタイプの役が多かった。でも今回、僕としては初めての試みで、香取さんのほうがトラブルメーカーなんです。
香取:おっしゃる通り、トラブルの中心にいる、一番問題を起こす人間の役は初めてだったので、最初はちょっと難しかったです。
三谷:難しかったですか? 悩んだ感じは伝わってこなかったんですけど……。でも今回はちょっと力が入っているんじゃないですか? いつも直前までセリフを覚えないとおっしゃってますけど、今回は覚えるのが早かったですもんね。
香取:いやいや、このドラマは昨日一日リハーサルして、今日もう本番。覚えないとやばいじゃないですか。
三谷:それでも覚えない人だったじゃないですか、「HR」のときは。
香取:あのときも一日リハで、次の日が本番でしたけど……。
三谷:リハーサルの日は最初の段階でまったくセリフ覚えてないし、やる気ない感じで入ってきてみんなを心配させて、みんなが帰った後に一人残って、ガーッて覚えてやってましたよね。でも今回は、リハーサルの頭から半分セリフが入ってる。
香取:入っていないですよ!
三谷:いやいやいや、なんでやる気になっていることが恥ずかしいみたいに振る舞うんですか。恥ずかしくないですよ? 全然。
香取:違う違う(笑)、恥ずかしいんじゃないです。やる気がないんですよ!
三谷:そんなわけない。誰よりも早く現場に来て、動きとか確認してるじゃないですか。あなたはどうしてそうなの?「今回はやる気になってます」って、どうして言えないんですか。
香取:やる気ない感じなのに、できちゃうっていうイメージでやってきたんですよ!(笑)
三谷:まあね(笑)。そっちのほうがカッコイイですよね。あんまりやる気を見せられても当たり前だし……じゃあ、香取さんは「やる気がない」ということで。
香取:これ、どういう記事になるんですか!
じゃれ合うような言い合いが続く。まるでこのやり取りが台本のあるコメディーであるように、息がピッタリだ。そんな阿吽の呼吸は、リハーサル風景からも伝わってきた。(ライター・大道絵里子)
※AERA 2020年4月13日号より抜粋