「賛否あるようですが、例えば『1時間だよ』って決めてもそれ以上にやっている家庭もある。1時間の根拠というのはあったほうがいい。条例を作っても守らない人は必ずいますが、守ろうとする人も多い。親御さんも注意しやすくなるので一定の意味はあるとは思います」
これまで常識と考えられていたことが覆されたことは過去にもある。例えば、未成年の飲酒。「未成年者飲酒禁止法」が成立したのは、1922(大正11)年のことだ。
「この法案の成立までに合計18回も廃案になりました。当時は未成年の飲酒はおかしなことではなかったのでしょう。スマホ依存は誰もがかかり得る『病気』です。まずは意識を高めないと規制もできません。理解していても依存症になることはありますが、理解していないと依存症まっしぐらになってしまう。これを機会に依存症をしっかり理解してほしいと願っています」
(編集部・三島恵美子)
■HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんオススメの一冊
『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は人間関係を築く上での「ひと通りではないやさしさ」を描いた物語。HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
* * *
ぬいぐるみと話すサークル「ぬいサー」に入部した七森(ななもり)は、大学2年の秋、はじめて彼女をつくる。小柄で男性性を感じさせない七森は、高校時代から女性と友だちになることはできたが、恋愛がよくわからない。しかし誰とも付き合えないことにコンプレックスを抱き、比較的仲の良い白城(しらき)に告白をした。だが本当は、まるで双子のようだと言われる、麦戸(むぎと)ちゃんのほうが好きである。しかし、彼女との得難い関係が壊れたらと思うと、告白できない。
誰もが当たり前のようにしている恋愛を、七森の持つやさしさが、躊躇(ためら)わせていた。そして麦戸ちゃんは、つらさをぬいぐるみだけに話すことで、七森をつらくさせない、というやさしさを持っていた。
やさしさはひと通りではない。やさしすぎる彼らを含めて俯瞰する世界は、やさしさに満ちあふれている。
※AERA 2020年4月13日号