伏流を生み、つないできたのは、各地の志ある記者たちだった。東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんは3年前、政治部の縄張りである菅官房長官の記者会見に乗り込んだ。官邸と記者クラブ加盟社の双方から攻撃を受けながらも、率直に質問を重ねてきた。

 今年3月には、朝日新聞南相馬支局記者の三浦英之さんが、福島を訪れた安倍首相を直撃した。「第1原発は今でもアンダーコントロールとお考えでしょうか」。五輪招致の国際公約が破綻していることは、地元で取材する記者が一番よく知っている。三浦さんは官邸記者クラブが独占する会見の場があることを探り当て、当然の疑問を突き付けた。

 メディア不信は根深く、矛先は大手か中小か、新聞かネットかを選ばない。残された時間もわずか。持ち場にかかわらず、各地の記者が目の前の権力と対峙していくしかない。自主規制せず、制止されるまで突っ込む。制止されたら理由と根拠を尋ね、不当なら従わない。ジャーナリスト倫理に従う。現場が米軍機の墜落現場でも首相官邸でも、同じことだ。

 元来、記者とはそういう「野蛮」な稼業のはずだった。(沖縄タイムス編集委員・阿部岳)

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