改正新型インフルエンザ等対策特別措置法を受けた記者会見を終えて会場を出る安倍晋三首相=2020年3月14日、首相官邸 (c)朝日新聞社
改正新型インフルエンザ等対策特別措置法を受けた記者会見を終えて会場を出る安倍晋三首相=2020年3月14日、首相官邸 (c)朝日新聞社
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「終わっちゃ駄目です」「質問に答えてください」――。3月14日の安倍晋三首相の記者会見。まだ多くの記者の挙手が続く最中、司会の長谷川栄一・内閣広報官が会見を打ち切ろうとした。その瞬間、複数の記者が声を上げ、会見場は騒然となった。首相会見の在り方が問われ、メディア不信が広がるなかで起きた今回の出来事。政治取材の現場でいったい何が起きたのか。

 米軍基地建設をめぐる「政府の暴走」や、米軍機墜落現場でのメディアと米軍の対峙を描いた『ルポ沖縄 国家の暴力 米軍新基地建設と「高江165日」の真実』(朝日文庫)。その著者で、当日の首相記者会見にも参加していた沖縄タイムス編集委員・阿部岳がリポートする。

*  *  *

 天井が高い。記者席は密集している。初めて入った首相官邸の記者会見室は、ゆとりがあるようなないような、独特な空間だった。

 3月14日夕、安倍晋三首相の会見が始まる45分前。まだ人もまばらな記者席を見渡す。前から2列目までは内閣記者会(官邸記者クラブ)の常駐19社の指定席になっている。

 一方、フリーランスやネットメディアの記者は後方の1カ所に固められる。ジャーナリストの神保哲生さんは「ここに座るでしょ? そうすると官邸職員が名前を聞きに来て、司会に紙で渡す。間違って指名しないようになっている」と苦笑いした。安倍政権下の7年間、参加が認められる首相会見には参加し続けてきたが、1度も指名されていないという。

 私が勤める沖縄タイムスは官邸記者クラブに加盟するが、常駐はしていない。席は常駐とフリーの中間なら、どこでもいい。気押される思いを振り払って前から3列目、質問者を指名する司会の正面に陣取ることにした。ここなら手を挙げているのがはっきり分かるだろう。

 安倍首相がこれから使う演台には職員の男性が立ち、マイクのテストに協力している。

「いかがですか、いかがですか? いんちき総理です」

 おどける男性は、確かに首相ではない。ただ、前回2月29日の会見は、この男性でも誰でも、十分務まる内容だった。

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江川紹子さんが「まだ質問があります」と…