小池都知事の「ロックダウンを招く」発言こそ先走った感がありましたが、そこからの巻き返しは見事です。会見も回数を重ねるごとに改善されています。「ロックダウン」「オーバーシュート」など独特のカタカナが分かりにくいと批判されると、すぐに軌道修正。「感染爆発」「重大局面」など漢字四文字で端的に表現。国に緊急事態宣言を出すよう働きかけたり、アーティストの支援に動いたりと、選挙が近いこともあり意気軒高です。その意味では特措法の趣旨にのっとりながら、独自のリーダーシップを発揮している点は評価できます。
特措法の趣旨という意味では、大阪の吉村洋文知事、北海道の鈴木直道知事も同様です。その独自のやり方に賛否はあるものの、最終的な審判は有権者が次の選挙でくだすことになります。愛知の大村秀章知事は、もともと地方自治体の予算が少なく、財源も乏しいので、東京、大阪、北海道と比べるとやれることも限定的なものであることは否めませんが、それにしても国頼みに過ぎます。
非常事態におけるリーダー像のあるべき姿として「市民全体のリーダーである自覚」が求められます。特に安倍首相は全ての国民を代表する存在です。繰り返しになりますが、批判に対してもしっかり対策の方向性と政策の説明を尽くし、非支持層も含めて説得して欲しいものです。また有事と不安につけ込んで国家緊急事態に関する法律や憲法改正の議論を進める先頭に首相自らが立っています。これはあまりにも拙速です。大きな制度変更は平時に、腰を据えて行うべきでしょう。
●西田亮介・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授による評価
各5点満点。(A)決断力(B)実行力(C)情報発信力(D)責任感(E)市民の支持
※5点満点の相対評価。総合は5項目の平均
・安倍晋三(首相)総合…2.2点
(A)2点(B)3点(C)1点(D)2点(E)3点
・小池百合子(東京都知事)総合…4.6点
(A)4点(B)5点(C)5点(D)5点(E)4点
・鈴木直道(北海道知事)総合…4.2点
(A)5点(B)4点(C)3点(D)4点(E)5点
・吉村洋文(大阪府知事)総合…2.8点
(A)3点(B)2点(C)4点(D)3点(E)2点
・大村秀章(愛知県知事)総合…1.2点
(A)1点(B)1点(C)2点(D)1点(E)1点
(編集部・中原一歩)
※AERA 2020年4月27日号