逸見政孝にタモリ、丹波哲郎、立川志の輔、そして前出の志村や文枝。そんな大物たちに対し、彼女は物怖じすることなく振る舞える。たとえば、タモリを「タモさん」と呼ぶなど、あの独特な口調で気さくに話しかけ、心をつかむのだ(そこには子供の頃、父の転勤で引っ越しが多かったことがプラスに働いているのだろう)。彼女はそうやって理想の娘もしくは孫、あるいは嫁的なポジションを獲得していった。

 なかでも、その能力が最大限に発揮されたのが「ブロードキャスター」(TBS系)である。福留功男がキャスターを務めたこの番組で、彼女は「お父さんのためのワイドショー講座」を15年以上にわたって担当。大物男性芸能人だけでなく、日本中の中高年オヤジをころがしてみせた。現在の安定感はここで確立されたといえる。

 しかも、その芸風は最近ますます、重宝されるものになってきた。少子高齢化により「介護してくれそうな娘もしくは嫁」というキャラの需要も高まっているからだ。たとえば「路線バスで寄り道の旅」(テレビ朝日系)で徳光和夫をサポートしている田中律子。あれはあの番組だけのポジションだが、ああいうイメージをより広い意味で身につけているのも、山瀬の強みだろう。

 では、それほどまでにおいしい山瀬的な芸風を若手で引き継げる者はいるだろうか。個人的に期待したいのは、にこるんこと藤田ニコルだ。独特な口調や声質にも通じるものがあるし、すでに梅沢富美男あたりをうまくころがしている。また、ああ見えてオヤジウケしそうな人生論を語れるところも有望かもしれない。

 というのも、2年前、彼女は「情熱大陸」(TBS系)でこんな話をしていた。

「たとえばさ、有名人の人が亡くなったりとかするじゃん。そのときってさ、みんな、ツイッターとかにさ、うわーっとか、悲しみの声みたいな、つぶやくじゃん。自分がもし死んじゃったときにそうなるのかなって、すごい不安なの。見えないわけじゃん。死んだらさ、ツイッターなんていじれないしさ。見たいよね、死んだときの自分のツイッターの声」

次のページ
「バカ」にもなれる強み