

気持ちがふさぐと消極的になり、ますます気持ちがふさぐ。そんな悪循環はちょっとした行動や習慣で、断ち切ることができる。さまざまな制限があるなかでも、今できることを見つけたい。AERA2020年4月27日号は、「できたこと手帳」を取り上げる。
* * *
外出自粛により、毎日やっていたことができなくなった人も多いだろう。会社に行けない、飲み会に行けない、ジムに行けない……。行動科学の専門家でネットマン代表の永谷研一さん(54)は、こんなときだからこそ「できないこと」ではなく、「できたこと」に注目するべきだと指摘する。
「人間はできないことに意識が向きがちですが、実は毎日何かしら達成している。自分自身の行動を知り、気持ちを前向きに保つためにも、毎日一~三つのできたことを探し、『できたこと手帳』として書き残すことをおすすめします」
特別なことを書く必要はなく、「早起きできた」「机の上を片付けてスッキリした」「ごはんがおいしく作れた」など、ささいなことで構わないという。すると、行動が制限されるなかでも、できていることがたくさんあるとわかる。これが自信になり、前向きな気持ちが保てるようになるという。
さらに週に1度、「今週のベストできたこと」を選び、なぜできたのか、次はどうすればいいかを考えることで、自分が大切にしていること、どうありたいのかが見えてくるという。
静岡県三島市の小学校非常勤職員、渡邉靖乃(やすの)さん(55)は1年半前から「できたこと手帳」を実践している。50歳を過ぎても自信が持てない自分を変えたいと思ったことがきっかけだ。できたことを書くことで、自分を認められるようになったと感じている。
手帳にはその日の感情を表すマークを入れているが、新型コロナの感染が拡大した3月は「悲しい」が並んだ。
長女(25)は感染者数の多い東京にいるし、職場である小学校は休校となった。この先どうなってしまうのか。不安になり、布団の中で泣いたこともあったという。「十分な睡眠を取った」「スーパーに夫と長男と行った」など、いつもなら書かないくらい当たり前のことを手帳に書くようになった。