切符売り場に出向くと、その上に電光掲示の時刻表が映し出されていた。それを目にして、立ち尽くしてしまった。
5分間隔、いや3分……そんな間隔で列車が発車しているのだ。これはもう東京駅並み、いやそれ以上ではないか。
駅構内も混みあっていた。これだけの便数の乗降客が行き来するのだ。
この街に新型コロナウイルスが発生した。感染の速さの一因は、武漢という街に人々が密集して暮らしていることだったと思う。都市の存在そのものが、ウイルス蔓延の舞台だった。
武漢は閉鎖された。武漢駅から人の姿が消えた。都市に植えつけられたスピード感で感染者用の病棟が建ちあがっていく。そして世界は感染の速さに包まれていく。各国首脳が次々に発令する非常事態宣言を耳にするとき、いつも武漢駅が蘇ってくる。発着する列車のスピード感……。そして駅のあの混雑。誰もが求める豊かさの所産なのだが。