宇宙最大の謎、「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」。これらの観測に、現在すばる望遠鏡が挑戦している。また岐阜県の飛騨市神岡町では、東京大学宇宙線研究所が「XMASS」と呼ばれる観測装置を鉱山跡の地下深くに設置。観測ではなく、暗黒物質を直接捕えて調べようという試みが進んでいる。

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 暗黒エネルギーや暗黒物質の謎に迫ろうとしているのは、すばる望遠鏡だけではない。特に暗黒物質については、すばるのように観測ではなく、直接捕えて調べようという試みも進んでいる。
 プロジェクトを率いる東大宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設長の鈴木洋一郎教授(62)たちが考案したのが、液体キセノンのタンクだ。暗黒物質の正体は謎だらけだが、重さはキセノンと同じ程度ではないかと見られている。そこでキセノンを身代りにして、暗黒物質を検出しようというのだ。
 ボウリングで、ボールがはじいたピンが真横のピンに当たると、当たったピンはそこに残って真横のピンだけがはじかれることがある。これと同様に、暗黒物質と同じ重さのキセノン原子に衝突させれば、暗黒物質に代わってキセノン原子が大きくはじかれる。キセノンははじかれると蛍光塗料のように淡い光を放つ性質があることから、その光を感知すれば暗黒物質を捕えることができるはずだ。
 案内された坑道の奥には、奥行きと高さが15メートル幅が12メートルの巨大な洞窟ができていた。そのほぼ中央に、直径と高さが10メートルの白銀色に輝くタンクが置かれていた。
「タンクのほぼ中央に、850キロの液体キセノンが入った内径80センチの容器がつり下げられています。これで宇宙からやってくる暗黒物質を捕まえるのです」
 80センチとは小さい。これで暗黒物質が捕まるのだろうか。
「私たちの周囲には、暗黒物質が秒速約270キロで、雨のように降り注いでいます。この大きさの装置を使えば、10日に1個程度の暗黒物質を捕まえることができるはずです」

※週刊朝日 2012年5月18日号