お皿を運んだり、卵を割ったり、お手伝いが少しずつできるようになってきた。補助付きの箸もうまく使えるようになった。言葉の理解も進んだし、話す言葉が格段に増えた。
そんなちびに、夫は何でもしっかり説明する。
子供だからとスルーしたりしない。
前に、夕食を夫に任せて仕事に出かけ、帰宅した時に、ちびが駆け寄って来て、
「あのねー泣いちゃったのー」
とちょっと照れたような感じで報告して来た。
夫に聞くと、夕食の最中にそうめんを手で掴んでぐちゃぐちゃと遊びだしたので怒ったというのだ。
「食べ物で遊んじゃだめ。ちゃんと食べなさい。そうやってぐちゃぐちゃってやった後、食べないでしょ、いつも。ほら、これ、自分でぐちゃぐちゃにしたんだから、ちゃんと食べなさいよ。分かった? ちゃんと食べて?」
ちびは手にそうめんを巻きつけたままじっと話を聞いていたが、
「食べるの?」
「うん」
「じゃ、食べなさい」
次の瞬間、握っていたそうめんを床にべちっ! と投げ落としたので、
「こら!! 食べ物を粗末にしちゃだめ!」
と怒られてうわーーん! と泣いたそうだ。
夫が私にこの経緯を説明している間、ちびはじっと夫の話に耳を傾けていた。
話し終えると夫はちびを抱き上げて膝に乗せ、向き合って、
「どうして怒られたかわかる?」
「うん」
「どうして?」
「……」
「食べ物で遊んで、粗末にしたからでしょ?」
「うん」
「もうやっちゃだめ。もうやらないね?」
「うん」
「うんじゃなくて、はいでしょ?」
「はい」
「ちゃんと分かった?」
「はい」
食べ物を粗末にしちゃいけない、という概念はまだ理解できないだろうけど、食べ物を床に投げてはいけないんだな、ということは伝わっているだろうなと思った。
夫は最後に念押しした。
「何が分かったの?」
ちびはちょっと考えて答えた。
「やさいジュースがすき」
我々は爆笑してしまった。
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