政府が本格的な検討作業に入った「9月入学」。教育評論家の尾木直樹さんが、専門家の視点から持論を展開する。
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全国のあらゆる学校で休校が続いています。教育現場では、児童・生徒らに教科書やプリントでの家庭学習をさせ、登校日に課題や宿題を提出させ、成績をつけるという、先生への「丸投げ」が行われています。親は家でのテレワークの傍ら勉強を教えるなど四苦八苦しています。こちらも家庭に「丸投げ」なのです。
お金や時間に余裕がある家庭は塾やツールを使って、いわゆる受験学力をつけていく。それができない家庭は遅れていきます。つまり、教育の格差がどんどん広がっていくのです。
オンライン授業という方法もありますが、公立の小中高で導入しているのは5%程度。東京都23区の場合、オンライン授業を採り入れているのは港区だけで、12区が導入を「検討中」としていますが、7区は「予定なし」です。地域でも教育環境の差があるのです。
文部科学省は、休校措置が解除されたら、夏休みの短縮、土曜授業、修学旅行や文化祭などの行事のカットで授業をする方針です。丁寧な教え方ができなくなる可能性があり、その結果、ついていけなくなって不登校になる子どもが増えるかもしれません。先生のほうも、「やってられない」と辞めていく人が出るかもしれません。これでは日本の教育は崩壊してしまいます。
これらの問題を解決するのが、「9月新学期」体制だと考えます。これなら、新学期がスタートするまで時間に余裕があるので、子どもたちはあせることなく学習できます。行事もなくさなくて済みますし、海外では秋入学制度の学校が多いので留学や教員の招聘、就職などにおいてやりとりがしやすくなり、本当のグローバル化を進めることもできます。
いろんな課題があることは承知していますが、その壁を乗り越えるヒントや方法は世界にも、日本にもあります。日本の教育は「学年主義」「履修主義」でやってきました。それを個人の状況に合わせて学習を達成したかで判断する「習得主義」に転換すればいいのです。