コロナ禍の今は、しっかりと運動できる状況にはないが、散歩や自宅でできる軽い筋トレに、たんぱく質摂取を組み合わせて、不足を補いたい。
医療法人アスムス(栃木県小山市)の管理栄養士で、訪問栄養指導をしている岩本佳代子さんも、高齢者の隠れ栄養失調を心配する。
「1日3食、ご飯にみそをつけただけ、毎日うどんだけという夫婦もいます」
そんな高齢者に対して岩本さんは、ご飯にしても、うどんにしても、「食べたいものを食べる」というスタンスでアドバイスする。極端な話、うどん好きなら、毎食うどんでもOKだ。
「食事は栄養補給ではなく、楽しむもの。ただ、それだけでは隠れ栄養失調になってしまうので、追加でこれとこれを取ろうねって話しています」(岩本さん)
例えば、先のうどん好きの高齢者には、溶き卵と細かく切ったはんぺんを混ぜたものをのせた「かき玉うどん」や、トマトとチキンを煮込んだコンソメスープの「洋風うどん」、みそ汁に肉とうどんを入れた「けんちんうどん」などを提案している。
そうめんであれば、付け合わせに冷ややっこを加える、つけ汁にゆで卵や肉、ネギを入れて「つけ麺風そうめん」にする、冷蔵庫の余った野菜やツナ缶と炒めて「そうめんチャンプル」にするなど。いつものメニューにちょっと工夫を施すだけで、たんぱく質もビタミン、ミネラルも取ることができるという。
このほか隠れ栄養失調を予防するポイントとして、
(1)旬の食材を採り入れる
(2)食材のいろどりを大事にする
という2点を挙げる。
「この時期でしたら、春キャベツや新タマネギ、タケノコ、イチゴなどで栄養もしっかり取れますし、何より季節感を味わえるので食事が楽しくなります。色は、ご飯やうどん、パンの白、肉の茶色だけではなく、緑、赤、黄色を追加すると良いでしょう」(同)
のみ込む力が弱い高齢者については、料理や介護を担当する家族にとろみのつけ方などを指導する。
岩本さんが関わった90歳の女性はずっと寝たきりだったが、栄養指導を始めてから半年ほどで車椅子を使って移動できるまで元気になった。今は毎日の食事を楽しみにしているという。
長期戦となりそうなコロナ禍。元気な人は隠れ栄養失調に陥らないよう、隠れ栄養失調の人は脱却を図れるよう、無理をしない範囲で専門家のアドバイスを実践してみてはどうだろうか。(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2020年5月22日号