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人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、85歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は、「手」で変わる』からの本連載。今回は、仕事が忙しく、子どもと一緒にいる時間が少ないことを悩む人たちに、子どもが自立心を育み、生き生きと伸びていくヒントを贈ります。
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娘がまだ小学生のときのことです。学校から帰ったあと、同級生の家に「遊ぼう」と誘いにいったそうです。するとそのおうちのお母さんから、「突然ひとのおうちに来ちゃだめよ。あなたのお母さんから、今日うちに遊びにくるってお電話いただいていないから、また今度ね」と言われたそうで……。
近所の子ども同士が遊ぶのに、母親がアポイントメントをとらなくてはいけないの? その当時私はびっくりしましたが、こういうことはいまでも普通にあるそうですね。
私の場合、私以外のお母さんはほぼ専業主婦の方という地域に住んでいましたから、私が「子どもをほったらかしにして働く母親」と白い目で見られていたということもあるのかもしれません。
実際に我が家の状況を見て、タウン紙に「鍵っ子あわれ」という投稿をされたこともありました。昭和40年代後半のことです。
私は働き続けていましたけれど、会社から家に戻ったら、ひたすら娘とよく話すよう心がけていました。今日学校であった話、いまなかよしのお友達の話、最近好きな本、学校で流行っているお洋服やヘアスタイル。いろいろ話して、一緒に眠って。
私が大事にしていたのは、子どもの自立心を育てることです。平日の昼間、いっしょに何かをすることはできないけれど、新しいことを学んでいくチャンスはどんどん与えてあげよう。そして娘が上手にできたらどんどん褒めてあげよう。そう決めていたのです。
「こういうこと、やってみる? きっとあなただったらできるよ」
「ねえ、どんなことやったのか、お母さんに教えて」