
多くの地域で「緊急事態宣言」が解除されたが、今後心配なのが感染の「第2波」だ。専門家は小康状態を迎えるこの夏に、いかに対策をとるかが重要だと指摘。また「集団免疫」がカギを握ると言う。感染症に詳しい医師らに取材したAERA 2020年5月25日号の記事を紹介する。
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「第2波対策でカギを握るのが、集団免疫の獲得です」
と話すのは、WHO(世界保健機関)で新型インフルエンザ対策に携わり海外の感染症対策にも詳しい、京都大学大学院医学研究科非常勤講師の村中璃子(りこ)医師だ。集団免疫とは、一般にワクチン接種を通じて特定のウイルスに対する免疫を持った人が増え、感染が広がりにくくなる状態を指す。
どんな感染症も、集団免疫が高まるにつれて流行は収まっていく。新型コロナワクチンが開発され人々に行き渡るまで2~3年かかるといわれる。ワクチンがない中、安全に集団免疫を得る唯一の方法は、医療崩壊を起こさないよう社会の中にゆっくりと感染を広げることだという指摘もある。
村中医師は、集団免疫の獲得と行動制限は「トレードオフ(両立できない)」の関係にあるとして次のように指摘する。
「ロックダウンを行い、いったんは流行の終息した海外諸国でも社会の抗体保有率はせいぜい数パーセント。集団免疫が見えてくるのは70%くらい感染する必要があると言われ、本当にロックダウンは正解だったのかという問いもある。いま議論は、『これからどうやって安全に集団免疫を獲得していくか』にシフトしています」
集団免疫獲得の過程で重要なのは、第2波が起きることを前提に、リスクの高い高齢者や医療関係者を守りながらも、元の生活に戻す努力をすることだという。
「その時に大切なのはトライアル&エラー、つまり試行錯誤です。パンデミック対策の基本は、流行が落ち着いているフェーズでは、できるだけ通常の社会活動や経済活動を続け、感染者が増えてきたら、また状況に応じた制限を行うことです」(村中医師)