「歯周病」という病名は広く一般の方々に認知されるようになりましたが、最新の研究では、歯周病は歯や口の中だけでなく、全身の健康とも大きくかかわっていることが分かってきています。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会は、最新研究をもとに、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』を発刊しました。本書から抜粋して、「外科手術」「インプラント治療」について紹介します。
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■がんの手術前にも歯周病治療が有効 入院日数が減るデータが!
全身麻酔下での外科手術でおこなう気管挿管の際、歯周病があると、プラーク中の細菌がチューブを通じて肺に送り込まれ、肺炎(人工呼吸器関連肺炎:VAP)を発症しやすくなります。
手術後の合併症では誤嚥性肺炎、がんの化学療法や放射線治療中に起こる菌血症(本来、無菌であるはずの血液の中に細菌が入り込む)も同じように口の中の細菌が危険因子となります。
こうしたトラブルを防ぐために、手術前やがん治療の前に、口腔機能管理をおこなう医療機関が増えています。専門的には「周術期口腔機能管理」といわれる医学管理で、2012年から健康保険の適応となっています。口腔機能管理の効果は非常に高く、入院日数が減るというデータもあります。食道がんや胃がんの手術をおこなう消化器外科、心臓の手術をおこなう心臓血管外科のほか、悪性リンパ腫などを治療する血液内科でも入院日数が減っているのは興味深い点です。
口腔機能管理の対象となる病気は年々増えており、最近では高齢者に多い大腿骨骨折の手術(気管挿管・全身麻酔下手術)でも実施されています。
≪まとめ≫
・手術やがんの化学療法、放射線治療の前に口腔機能管理をすると肺炎などの合併症を発症しにくい
・さまざまな診療科において、口腔機能管理をおこなった群では入院日数が減ることが確認されている
■歯周病の人はインプラント治療をしてはいけない!?
未治療の歯周病があり、適切な治療を受けていない人がインプラントを入れると、うまくインプラントが生着しないばかりか、炎症が起きてインプラント周囲炎になりやすいことがわかっています。