■後藤が残した「言葉」
晩年は政治倫理を訴えて各地を遊説していたが、1929年(昭和4年)、遊説先で脳溢血(のういっけつ)に倒れ、そのまま帰らぬ人となった。倒れる前日、ボーイスカウト運動を手伝っていた三島通陽に「よく聞け、金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ。よく覚えておけ」と言い残したという。
新型コロナウイルス騒動で、全国民PCR検査派と、医師の診断のもとに必要な患者さんや疑いの方に選択的にPCR検査を行うべき派(ちなみに筆者はこの立場をとるが)、緊急事態宣言継続派と早期終了派など、専門家と非専門家、医学者と経済学者、与党と野党の議論がかみ合わない日が長く続いた。今日、後藤伯が世にあれば、どのような助言をされるか聞いてみたいものである。
◯早川 智(はやかわ・さとし)/1958年生まれ。日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授。医師。日本大学医学部卒。87年同大学院医学研究科修了。米City of Hope研究所、国立感染症研究所エイズ研究センター客員研究員などを経て、2007年から現職。著書に『戦国武将を診る』(朝日新聞出版)など
※AERAオンライン限定記事