「今期は4~6月期がおそらく底(ボトム)になるのではないでしょうか。日本で営業や外出の自粛が始まったのは4月に入ってからで、国内企業の業績が4~6月期に急回復するとは思えません。その後にどうなるか。経済への影響を考えると、今年後半まで自粛要請を続けるわけにはいかないでしょうが、不透明であることは確かです」

 業績が見通せない状況が続けば、雇用への不安も高まる。厚生労働省は、コロナの影響で解雇や雇い止めをされた人が5月21日時点で、見込みを含め1万835人にのぼったと明らかにした。第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストは、最悪の場合、失業者が340万人にのぼると予想する。5月初旬のレポートでは、緊急事態宣言による外出自粛要請などで、特定警戒地域における不要不急の消費が5月末まで止まったと仮定すると、国内総生産(GDP)の落ち込み幅から計算して数十万人規模の失業者が発生すると見込んでいた。感染が収束に向かったとしても、景気や消費が正常化するまでには時間がかかると指摘する。

「失業者はコロナ問題が夏場までに収束しても約160万人、収束するのが秋ごろなら260万人程度、長期にわたると340万人くらいになる可能性があります。少なくとも、1年間で113万人増えたリーマン・ショック時を上回る規模になるでしょう」

 とくに危うい立場に置かれているのが、派遣やアルバイト、パートなどの非正規社員だ。派遣業界では、5月末に多数の派遣社員が雇い止めを通告される「5月危機」が懸念されている。派遣契約は四半期ごとの3カ月更新が多く、その1カ月前には更新するかどうかが本人に伝えられるからだ。4月に契約した人の期限は6月末で、今月末に大量の派遣契約が打ち切られる可能性があるという。

 厚生労働省の外郭団体である労働政策研究・研修機構の天瀬光二副所長はこう話す。

「一般的に、経済不安に陥ったときには会社との関係の弱い労働者から契約が打ち切られやすい。とくに今回大きな影響を受けた飲食業やサービス業は派遣社員の割合も多く、失業者数を押し上げる可能性があります」

(本誌・池田正史、浅井秀樹、西岡千史)

週刊朝日  2020年6月5日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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