

コロナショックは、上場企業の業績もむしばみ始めた。5月15日には、アパレル大手のレナウンが東京地裁から民事再生手続き開始の決定を受けて経営破たんした。負債総額は約138億円。同社は1902年創業の老舗で、紳士服「ダーバン」などの有力ブランドを抱える。中国資本の傘下に入るなど経営難が続いていたが、コロナで休業した百貨店を通じた販売量が減ったことが、だめ押しになった。上場企業としては初めての「コロナ関連倒産」とされる。
深刻な状況は、主要企業の決算にも表れている。
ソフトバンクグループは5月18日、20年1~3月期の純損益が1.4兆円の赤字だったと発表した。孫正義会長兼社長が主導する投資事業で、コロナなどの影響を受けた投資先の企業価値が下がり、巨額の損失が出たことが響いた。四半期ベースでの赤字幅は日本企業として最大規模だ。
海外との往来が制限され、国際線の9割減便を強いられている航空業界も厳しい。日本航空(JAL)は20年1~3月期の連結決算で純損益は229億円の赤字だった。四半期ベースの最終赤字は12年の再上場後は初めて。ANAホールディングスも、1~3月期に587億円の赤字と過去最大の赤字幅を記録。業界団体は、国内全体で航空産業の売り上げが1兆円規模で減ると見込む。
ものづくりの主力、自動車メーカーもコロナで工場の一部休止を余儀なくされた。日産自動車は、5月28日に発表予定の20年3月期の通期決算で純損益が赤字に転落する見通しをすでに示している。トヨタ自動車は、年内は前年並みの販売量を回復できないと予想する。調査会社のIHSマークイットによると、20年の世界の新車販売台数は19年より約2割減る見込みだ。
自動車向けなどの鋼材需要が急減した鉄鋼業界も苦しむ。国内最大手の日本製鉄は20年3月期の純損益が4315億円の赤字で、赤字額はやはり過去最大となった。
国内企業の21年3月期の業績は、さらに悪化しそうだ。東証1部上場企業の決算を集計したSMBC日興証券によれば、5月12日時点で6割近い企業が同期の業績見通しを開示していないという。例年なら1割ほどにとどまるところだが、株式調査部の伊藤桂一アナリストは「予想が見通せないのでは」と話す。