今はスマートフォンでオンライン授業を受けるという学生もいるかもしれません。私も大学でオンライン授業をおこなっていますが、学生にはHDMIケーブルでテレビに接続するなどしてできるだけ大画面で参加するようアドバイスしています。

 授業をする側にも工夫が必要です。まず、できるだけカメラ目線で話しかけること。質問する際もカメラ目線を維持することで、学生側からすると「先生から質問がくるかもしれない」という合図になります。いつ質問がくるのかわからない状態だと学生もずっと緊張が続いてしまいますが、カメラ目線の合図があれば気が楽になります。

 また一番重要なのは、ファシリテーターやティーチングアシスタント(TA)といった人に、授業を補助してもらうことです。例えば先生が学生に質問するときは、TAが司会のように間に入る。チャットで学生からの質問を受け付けている場合は、TAが質問を選んで先生に聞く。先生と学生がコミュニケーションする際にワンクッション置くことで、先生も学生も、オンライン特有の疲れが減るでしょう。

――今後、視線一致型のテレビ会議が主流になるのでしょうか。

 まだ一般的には視線一致型装置は普及していません。しかし、視線一致に関する研究は1967年にはすでに存在していました。視線が合わないことによる不自然さを検証した結果、カメラはモニターの上部分に設置するのが一番よいということを示した論文です。そして80年代にはNTTが視線一致を実現させる装置の研究を始めています。まだブラウン管モニターの時代です。

 ただ今後も視線一致に関する課題は残っています。たとえば人間は人の目線に非常に敏感で、カメラ目線の二次元の画像は、たとえ5~6メートル離れた場所にあったとしても、自分が見つめられているような感覚になってしまいます(モナリザ効果)。そのため、視線一致のディスプレーが複数あると、人はその視線に疲弊してしまいます。

 これが二次元ではなく三次元の立体画像であれば、その疲弊も緩和され、複数人のディスカッションを視線一致型でおこなうことができるのではないか。私は今、そのような研究もおこなっています。いままで日本ではテレビ会議はあまり普及していませんでしたが、このオンライン化の流れを受けて、変わっていくのではないかと思っています。

(注)谷田貝雅典・坂井滋和・永岡慶三・安田孝美(2010) 視線一致型および従来型テレビ会議システムを利用した遠隔授業と対面授業における学習者特性に応じた学習効果の共分散構造分析 教育システム情報学会誌 Vol.27, No.3 11-23

(文・白石圭)