全国の学校が授業のオンライン化を模索しているが、やはりどうしても対面とは違う感覚は拭い切れない。情報科学・教育工学が専門の共立女子大学、谷田貝雅典教授は、その理由が「視線が合わないこと」にあるといい、テレビ会議システム特有の負の側面と正の側面があるという。また、学習者の属性によって、学習効果に違いが出ることが研究で示されているという。オンライン授業は教育に良いのか、悪いのか、谷田貝教授に聞いた。
* * *
――オンライン授業のためにさまざまな学校がZoomなどのテレビ会議ツールを使っています。
通常、テレビ会議はカメラとディスプレーが離れているため、双方の視線が合いません。これが対面とは違った不自然な感覚を生んでいます。
私は視線の一致が学習にどのような影響を与えるかを測るため、「視線一致型装置」を用いた実験をおこないました。視線一致型装置とは、カメラの前にハーフミラーを設置し、そこにディスプレーの映像を投影することで、相手の目を見る視線とカメラに向ける視線を一致させる装置です。これを用いて視線一致型、従来の視線不一致型、対面の3パターンで174人の高校生に同内容の授業をおこない、学習効果を比較しました(注)。
研究でまず明らかになったのは、視線不一致型のテレビ会議では、学習者は「ゆるみ」や「飽き」、「疲労感」をかなり感じやすく、それによる学習効果の著しい低下が見られるということでした。一方、視線一致型と対面の学習効果は同程度でした。
――それはなぜですか?
視線が一致しないと、リアリティーが削がれてしまうからだと考えられます。たとえば授業中に教員が学習者を指して発言を求めるような形式の場合、「いま目が合ったから指されるかな」といった空気感・緊張感が伝わらない。指されても、目が合わないので自分が指されたのかどうかが一瞬わからない。「間」の取り方がわからないのです。
また、慣れるまでは相手の発言を聞き返すなど、コミュニケーションが円滑にいかないこともよくあります。このような状態で一生懸命、授業についていこうとすると、学習者に負荷がかかり、疲労感が高まっていきます。視線が一致するかしないかという環境によって、学習効果の格差が生まれるのです。