新型コロナウイルス禍の現在、これまでのように当たり前にサッカーが見られない事態に直面している。ファン・サポーター文化の一端を担ってきた植田だからこそ、感じることもある。
「この映画を見直して思う。もちろん選手、関係者の声はおもしろい。だけどそれはボールを蹴っているから。でも今は誰もボールを蹴れないから、サッカーが見られない。これだけ長い間見なかったことはない。きれいごとじゃなく、サッカーがあって笑顔でいられれば十分で、それが当たり前の日常」
「これまで『サッカーはカルチャーだ』と思っていた。ボールを蹴らなくてもいろいろな文化があって、語れて、表現できる。だけど『ボールを蹴ることが大事だ』と痛感した。ボールを蹴ることを軸にカルチャーが生まれる。だから早くボールを蹴って欲しい。サッカーに触れたい」
こんな時だからこそ、『あの時』の日本代表を見つめ直すのも“あり”だ。それぞれがサッカーへの向き合い方を改めて考えるきっかけになるかもしれない。理屈ではない、心の叫びがつまった2作品である。
「ボールを蹴らないとサッカーはキックオフしないから」
植田が何度も口にしたように、当たり前の日々をサッカーファンの誰もが望んでいる。
(*1)都並敏史:「狂気のサイドバック」と呼ばれた、日本サッカー史に残る選手。読売クラブなどで活躍した。国際Aマッチ78試合。
(*2)リオネル・メッシ:FCバルセロナ所属の世界的スーパースター。
(*3)ディエゴ・マラドーナ:『背番号10』の伝説的選手。プレーはもちろん言動など、すべてが記憶と記録に残る。
植田朝日/うえだ・あさひ
1973年7月7日、東京都出身。ドイツ、イギリスへの留学経験で得たサッカー文化を日本に広め、大きな影響を与え続けている。サッカー日本代表のサポーター集団「ウルトラス・ニッポン」の中心人物として知られ、Jリーグ・FC東京を溺愛しスタジアムへ足を運ぶ。現在はアパレル、イベント等のプロデュースや映画監督としても活躍。テレビ・ラジオ番組への出演や舞台の脚本・演出、コラム・書籍の執筆など手掛ける。芸人・ゆってぃ、と共にパーソナリティをつとめる「デカメロンR」が、毎週金曜25:00から調布FMでオンエア中。
文/山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。