●沖田総司には唯一の墓
沖田は白河藩藩士の足軽の長男として現在の西麻布近くで誕生、初参りは今も残る櫻田神社で行ったという。櫻田神社では沖田の名の入った御朱印もいただくことができる。お墓は六本木にある専称寺に立てられた。ここではっきり書いておかねばならないが、以前は公開されていた沖田の墓は現在は非公開となっている。現在は「新選組友の会」が行う1年に一度のイベント開催日だけに公開されることとなったが、残念ながら2020年の今年はコロナ禍の影響でこれも中止となった。非公開となってしまった理由は、熱烈なファンの行動にあると聞く。お寺は誰かひとりのために存在しているわけではないことを改めて考えさせられた事例である。
●近藤の死を知らず
さて、沖田と近藤のつながりは、近藤の養父が作った道場・試衛館にある。ここで近藤は、沖田総司だけでなく土方歳三、井上源三郎、山南敬助、永倉新八、原田左之助、藤堂平助らともつながっている。この試衛館は現在の市谷柳町付近にあり、千駄ケ谷で病床に伏せていたならば、沖田にとって懐かしい場所柄だったのではないだろうか。そんな沖田には、新選組の動向はほとんど伝えられていなかったらしく、亡くなる1ケ月ほど前にすでに捕らえられ、板橋で斬首された近藤の死去(旧暦4月25日)を知らぬままであった。
●新選組のふるさと・日野市
沖田は、六番隊組長だった井上源三郎と親戚関係にあり、井上と土方歳三が生まれ育った東京・日野で過ごしたこともあるという。新選組にあっては最後の箱館戦争まで生き命を落とした(1年後の旧暦5月11日)土方は、最も人気がある人物のためか、残っているお墓も多く、土方家の墓所・石田寺(せきでんじ)、函館・称名寺、会津若松・天寧寺(ここには土方の建てた近藤の墓も)、荒川・円通寺など関わりのあった各土地で弔われているのだ。土方家の菩提寺である高幡山金剛寺(高幡不動)には、土方歳三の像が立ち、お守りも授与されていて、大日堂には土方歳三の位牌のほか、新選組隊士慰霊の大位牌、新選組資料などが展示されており、東京では一番の新選組の聖地となっている。
今年も、多くの組員たちの遠忌がやってくるが、今回は残念ながら中止となる行事も多い。これは新選組ゆかりの地に限った話ではないわけで、いくつかの寺社を紹介しておきながらこんなことを言うのも憚られるが、聖地巡りは今しばらく控えておいていただきたいと、切に願っている。来年はきっとチームで出かけても大丈夫な年になっていることだろう。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)