そばの器をスプレーした布巾で拭ってくれたおじさん。その丼を持ってカウンターへ。前のお客のつゆがこぼれていたので、おばさんが拭いてくれた。上からまた「シュッ!」とスプレーして二度拭き。いつもトングで入れ放題だったネギの箱がない。「衛生上ごめんなさい」の貼り紙。コロナのせいでネギも入れられなくなってしまった。

 辛くしてもウイルスに効くわけないのだが、七味を多めに入れてみる。箸は割り箸でないのだが、大丈夫だろうか……と思っていたら使用前に箸を拭くための除菌ティッシュが置いてあった。迷わず使用。

 3カ月ぶりの紅ショウガ天そばはやはり抜群に美味いものではなく、以前と変わらず不要不急の味だった。家庭の薄味に慣れた胃に染み渡る刺々しい汁と油。ほどよくコシのないそば。たった2分で完食。ご馳走さまでした。うーん。紅ショウガ天そばは細心の注意を払いながら食うものではないな。「早く気楽に貪りたいものだ」と思いながら、また帰り際に両手に「シュッ」。しばらくこの生活が続くのか。

週刊朝日  2020年6月19日号

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