タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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「久々に出社して、今から自転車で帰宅。もうすぐ前を通りますよー」
メッセージを見てベランダに出ると、友人が向こうから手を振っていました。数日前から街が活気づいて、近所の商業施設も営業を再開。私は相変わらずオンラインでいろんな仕事をしているのですが、なんとなく「ああ、人々が日常に返っていく」という、置いてけぼり感を味わっていました。そんなときに、うれしい生身のコンタクト。持つべきものは陽気な友達です。
コロナうつが心配されています。日常を取り戻す街や、コロナ以外の話題が増えていくネットを見て、取り残されている気持ちになっている人も多いでしょう。これまでは「みんな不安、みんな不自由」だったのに、これからはその差があらわになります。
もともと5月病や、梅雨の憂鬱(ゆううつ)が重なる季節。長い外出制限でストレスもたまっています。5月の末には、ネットいじめのニュースが連日報じられました。WHOの自殺報道の手引きでは、詳細な手段を報じないことや、センセーショナルに繰り返し報じないこと、支援窓口を掲載することなどが示されていますが、そうした点に無配慮な報道も数多くありました。
もし気持ちが落ち込んで孤独を感じる時は、早めに誰かに気持ちを話すことが大事です。厚生労働省のサイトには相談窓口の一覧があります。近所の心療内科や、最初は友達に話すのでもいい。SNSやニュースから離れて、好きなことをして寝る。自分を守って下さい。
6月末に予想される大量の派遣切りなど、今後も厳しい状況が続きます。孤立する人も増えるでしょう。国や自治体は自殺予防策やメンタルケアの体制を厚くすることが急務です。心のケアは命のケア。道路や橋と同じように、精神面の支援は、人を世界とつなぐための重要な施策です。
※AERA 2020年6月15日号