その後は、旭化成がより多くの患者を対象に長期の治験をおこない、問題なければ29年からの軟骨組織の販売を見込んでいる。

 安全性について、妻木医師はこう話す。

「iPS細胞は腫瘍をつくりうるのですが、ひざの軟骨移植では腫瘍にはならないことが動物実験で確認されています。腫瘍にならない分化誘導方法をし、軟骨組織にiPS細胞が混じっていないので防げるのです。また、移植した軟骨組織が成長しすぎる可能性はありますが、その場合は関節鏡で削ったりする処置が検討されます」

 なお、免疫抑制剤は使わない。他人由来の軟骨組織を移植しても拒絶されない理由は、軟骨の周りは血管がない細胞外マトリックスに覆われていて、移植しても患者の免疫細胞と軟骨細胞が接触せず、免疫反応を起こさないと見込まれているからだ。

 妻木医師は「将来的には変形性ひざ関節症も治療対象にしたい」と語る。患者数がとても多い疾患だ。ひざの痛みに悩む人々に、いま光が差し込んでいる。

(文・小久保よしの)

≪取材協力≫
京都大学iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 妻木範行医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

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