一方で、江戸時代の儒学者、佐藤一斎の『言志四録』にはこうあります。
「自分を責めることのきびしい人は、人を責めることもきびしい。他人を思いやることの寛容な人は、自分を思いやることも寛容である。これらは皆、厳なれば厳、寛なれば寛と、一方に偏していることは免れない。立派な人間である君子は、自らを責めること厳で、他人を責めること寛である」(川上正光訳注、講談社学術文庫)
つまり、自分よりも他人をより一層、許すようにしろということですね。
中国明代の洪自誠による人生指南の書『菜根譚』にはこうあります。
「人が世の中を生きてゆく時には、自分から一歩をゆずることがよりすぐれた道である。この一歩をゆずることが、それがそのまま一歩を進める根本となるのである。人を遇する時には、完全なことを求めないで、九分ぐらいに止めて、あとの一分は寛大にして見過ごすようにするのがよいことである」(中村璋八・石川力山訳注、講談社学術文庫)
他人に対しては寛大であることが、ひいては自分にとってもプラスになるというわけです。
許すこころを持つというのは、ナイス・エイジングにとって、とても大事な柱ではないでしょうか。
※週刊朝日 2020年6月19日号