帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
この記事の写真をすべて見る
人を許す寛大さを持ちたい (GettyImages)
人を許す寛大さを持ちたい (GettyImages)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「許すということ」。

*  *  *

【ポイント】
(1)怒りを感じたら許すことで対応する
(2)許す相手は他人だけでなく自分も
(3)ナイス・エイジングにとってとても大事

 ナイス・エイジングにとっての大敵は、怒ることです。

 怒りによって血圧が上昇して脳出血のリスクが高まります。心臓の冠動脈が収縮して、狭心症や心筋梗塞のリスクも高まります。また自律神経のうち、交感神経の働きが、いやが上にも高まり、副交感神経とのバランスが大きく崩れることになります。

 貝原益軒の『養生訓』にも怒ってはならないという教えが再三、登場します。こんな具合です。

「老(おい)ては気すくなし。気をへらす事をいむべし。第一、いかるべからず」(巻第八の7)

 しかし、最近の世の中の動きをみていると怒りたくなりますね。私はまず怒らない方なのですが、つい怒りを感じそうになる時があります。

 そういう時のひとつの対応はすでに書きましたが(5月22日号)、諦めることです。諦めは心を平静にします。

 そして、もうひとつの対応は許すことです。許すとは元来、固く締められていたものを「ゆるくする」という意味だそうです。同義語として、寛恕(かんじょ)、宥恕(ゆうじょ)があります。ひろいこころでゆるす、寛大なこころでゆるすことで、どちらも字を見ているだけでほのぼのとした気持ちになりますね。

『養生訓』ではこのように説いています。

「過ぎ去たる人の過(あやまち)を、とがむべからず。我が過を、しきりに悔ゆべからず。人の無礼なる横逆を、いかりうらむべからず。是皆、老人養生の道なり。又、老人の徳行のつつしみなり」(巻第八の6)

 ここでは「人の過」と「我が過」について語られています。つまり、他人の過ちだけでなく、自分の過ちも許せということです。

次のページ