日本のエネルギー政策の「聖地」となっている青森県六ケ所村。ニュースキャスターの辛坊治郎氏がこの地を訪ね、日本の原発問題の真実をレポートする。そして、「我々は原発をどうすべきか?」と疑問を投げかける。

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「核燃料再処理工場」が本当に動き出せば、毎年日本の原発が生み出す約1千トンの使用済み核燃料のうち8割を処理することができて、そこから新たな核燃料を作り出し、残りを、少なくとも使用済み核燃料そのもので保管するよりは安全なガラス固化体に作り替えることができる。
 しかし、これでいよいよ問題解決!とは、残念ながらいきそうにない。
 皆さんには素朴な疑問が一つ浮かび上がるはずだ。それは、最終的に核燃料から分離された、高線量の核廃棄物であるガラス固化体はどこへ行くのか?という疑問だろう。
 実はここに日本の原子力政策の最大の問題点が隠れているのだが、今この原稿を書いている時点で、これに答えを出せる人はどこにもいない。おそらく10年後の今日でもいないだろう。青森県との契約で、今後50年間、ガラス固化体はこの地に保管されることが決まっているが、「永遠」にこの地に留まる低レベル放射性廃棄物と違って、地元はあくまでも最終処分地にならないことを条件に、この施設を受け入れた。
 このガラス固化体は、防護装置なしに近づくと即死する。
 去年から今年にかけて、核燃料の最終処分に関して、いくつかの注目すべき報道がなされた。ロシア政府が、使用済み核燃料の最終処分地として日本政府に名乗りを上げていた話、日米政府が秘密裏にモンゴルに最終処分場を造る計画を持っていた話、さらに使用済み核燃料を再処理せずにそのまま埋める方が、再処理よりもはるかに安い値段で処理が可能だという話。
 また、原発の敷地内にある使用済み核燃料一時保管プールは、国内の原発が再稼働すれば遠からず満杯になる一方、その核燃料を処理する工場は稼働しておらず、さらに将来的に累計18兆円の巨費を投じてガラス固化体を作り出しても、それを運んでゆく場所がない現実。
 さぁ、これらの事実を知って皆さんは原発をどうすべきだとお思いだろうか?
 今回は結論を述べない。一つひとつの事実の先に、自ずと結論は見えてくるのだと思う。

※週刊朝日 2012年3月30日号